臆病なサイモン
「…オーイ、ちょっと手伝ってくれー」
食後、洗面所に引っ込んだまま出てこない父親から妹が呼ばれた。
妹はふふ、なんて笑いながら、俺に火のついた線香花火を持たせて行ってしまう。
パチ、…チ。
持ち主の変わった儚げな「命の一生」は、一瞬だけ強く燃え上がり、また穏やかに弾け始める。
『サイモンなら、できるよ』
ジジジジ、とこよりを伝う音が気持ちいい。
夏だな、なんて、そんなこと考えてる俺に見守られながら、手元にあるふたつの線香花火は小気味良い音を立てて徐々に小さくなってゆく。
『あんな公衆の面前で、ダチンコ宣言できたんだから、』
(……初めて出来たダチに、オマエならできる、って背中押されてんだから、…できる)
『君は、大丈夫』
やってやらなきゃ、俺は前に進めない。