臆病なサイモン
まさか予想だにしなかったオヤジの半端ないイメチェンに、口をパクパクさせるしかない、俺。
そんな俺の反応に大爆笑してやがる妹と、母親。
照れ臭そうに笑う、父。
「結構、似合ってるだろう」
そんなオヤジの発言に、母親が限界を迎えて過呼吸になりかけるまで爆笑する。
オイコラ、今はそんな場面じゃねんだぞ。
なんて、ツッコミ、今の俺にできるわけ、ない。
「な、なん…」
完全にアウェイな俺は、なんかもうどうしたらいいのかも解んなくなって、やっぱ魚みたいにパクパクするしかなかった。
こんな状態でも涙とやらは泉のように湧くらしい。
ちくしょう。
そんな負け惜しみに歯を食いしばりながら、じわりと湧き上がる涙を必死で堪えた。
「俺は、お前の髪の色が好きなんだぞ。なのにお前が、いつまでも気にしてばかり居るから…」
ふふ、と、キンパツのオヤジが皺を深めて笑う。
「…お前は俺に似て、生真面目だからなぁ」
大切に、大切にしていた言葉を、また、言って貰えるなんて。