臆病なサイモン









まさか予想だにしなかったオヤジの半端ないイメチェンに、口をパクパクさせるしかない、俺。


そんな俺の反応に大爆笑してやがる妹と、母親。


照れ臭そうに笑う、父。





「結構、似合ってるだろう」


そんなオヤジの発言に、母親が限界を迎えて過呼吸になりかけるまで爆笑する。

オイコラ、今はそんな場面じゃねんだぞ。

なんて、ツッコミ、今の俺にできるわけ、ない。





「な、なん…」


完全にアウェイな俺は、なんかもうどうしたらいいのかも解んなくなって、やっぱ魚みたいにパクパクするしかなかった。


こんな状態でも涙とやらは泉のように湧くらしい。



ちくしょう。


そんな負け惜しみに歯を食いしばりながら、じわりと湧き上がる涙を必死で堪えた。




「俺は、お前の髪の色が好きなんだぞ。なのにお前が、いつまでも気にしてばかり居るから…」



ふふ、と、キンパツのオヤジが皺を深めて笑う。



「…お前は俺に似て、生真面目だからなぁ」


大切に、大切にしていた言葉を、また、言って貰えるなんて。










< 259 / 273 >

この作品をシェア

pagetop