臆病なサイモン
* * *
「シャラップ、セミ」
学校近くの雑木林で、今の季節を謳歌している蝉達が猛烈な勢いで鳴いていた。
耳に馴染むそのリズムは、「夏」の匂いをぐんと色濃くさせて、俺の発汗作用を更に促す。
ワーイこれで俺も魅惑のスリムボディ!
…なんて、うれしくねぇよ。
八月、半ば。
猛暑なんてレベルからは既に逸脱してる、今日はスーパーギャラクシーな常夏デイ。
ギンギラギンにさりげなく強烈な太陽の下、俺は鉄板のように熱い屋上に居た。
「…だらりら」
カッターシャツの前開いて、中に着てる黒ティーを見てみたら、汗でぐっしょりと濡れている。
首元なんてもう、ブラックインブラック、みたいな。
汗で濡れて、色が変わってた。
「あち、」
真夏、って、暑いな。
なんて、当たり前のこと、考える。
出校日でもなんでもない今日。
休み返上で頑張っている部活生達の練習音と、地味に静かな校舎とのコラボが、なんかイイ感じだった。