臆病なサイモン
「ヒャンゴー」
ガリガリくんを咥えたまま、隣でバテてるダチを呼んだら変な声が出た。
なんちゃってヘリウム。
…アホらし。
「ヒャーンーゴー」
俺のそんな呼び掛けに、ダンゴは動かなかった。
タオルで顔を覆いながら、範囲の狭い影に捻り込むように寝転んでるダンゴは、マジ寝してるっぽい。
けど、数秒してから不愉快そうに唸り声上げた。
「…なーにー」
顔を隠していたタオルの隙間から、ちらりと細い目がこっちを見る。
完全にだらけきってるダンゴの眼は激しく澱んでいて、なんか迫力がいつもの二割増し。
センパイこわいよ。
「…ダンゴ、進路決めた?」
今日は髪の毛をお団子にまとめないで、無造作に垂らしてる、ちょっとレアなダンゴに、そう訊いてみる。
「…就職」
したら、相当ビッグな答えが帰ってきた。
(…あ、でも、そっか)
ダンゴは両親居ないし、保護者はホンダの親だし、進学しないで働くってのが、実は彼女にとってベストなのかもしれない。
(でもそれ、ちょっとサミシー…)
かも、しんない。