臆病なサイモン
うたた寝から強制的に覚醒させられたダンゴは、しかも起き抜けにそんな話しをされて、ちょっと不機嫌そうだった。
考えるよりも早く、唇が動く。
「……それは君が誰も信用してないからじゃないの」
でも、返ってきた言葉は意外に平凡で、ちょっと落ち込む。
まあなに勝手に期待しといてがっくりしてんだ、ってハナシだけどね。
「……信用する相手がいないって、あんま良くないカンジ?」
それが「悪い」って断言できるようなことじゃないのはなんとなくわかる。
でも俺は、「人」としてアリなのかナシなのかを聞きたいわけで。
俺がそう口にしたら、ダンゴは心底から俺を馬鹿にするような視線を向けてきた。
その強い視線に、一瞬だけ怯む。
「……なにそれ。それは良くないことだよ、って私が言えば、サイモンは「誰でもいい誰か」を信用しようと努力するわけ?」
――随分おざなりな「ダチンコ」だね、君にとってのブラザーは。
「……」
ガツーン。
て、キタ。
鈍器で横っ面ぶん殴られた状態で脳みそが揺れてる。
『誰でもいい、誰か』
それは俺に、お前は酷薄な人間だと、正面きってメンチ切ってた。
ダンゴは嫌悪ではなく侮蔑を込めたような眼で俺をひたりと見つめる。
あれだけ暑かった体感温度が、海に沈められてしまったように一気に冷えた。
「むしろ気付いてくれた人間に感謝すべきことなのに、君はビビって逃げるだけ。だって傷つきたくないから?怖いから?どうしたらいいかわからないから?……彼らは君と本当のダチンコになりたくて、そんなこと言ったかもしれないのに?」
そんなセリフをよく本人の目を見て言えるよな、って言い返してみたかったけど、そんなん、カッコわる過ぎてできない。
なにより、俺が今までそういったダチンコたちにしてきたことのほうが酷いってわかるから。
黙ったまんまの俺を気遣うでもなく、ダンゴは続ける。
「君が友達を必要としてなくても、周りは少なくとも友達だと思ってくれてる。それなのに君は独りよがりな独りぼっちを嘆いて、いつまで経っても心を開いてくれない。……安心していいよ。君の「ソレ」に気付いてくれた聰明な友人候補達は、君のその臆病風に呆れて結果的には君から離れただろうから。君が逃げなかったとしてもね」
そこで気付く。
ダンゴの口調は辛辣だが、ダンゴは腹を立ててなどいないことを。
真正面から「本当のこと」を俺にぶちまけてる。
わからせようとしてるんじゃない。
諭そうとしてるわけでもない。
ただの「マジな話」をしてる。
「君は、他人を羨み過ぎてる、ただのコンプレックスの塊だ」