臆病なサイモン
どうしようもなかった。
今となっては、そう言うしかないかもしれない。
気付いたらダチンコ的ポジションな奴らが周りに居たから、あぁこうなっちゃったからには、もう従うしかないよな、って。
「友達」の枠がなんなのか俺には解らなかったし、知る術もなかった。
ただ干渉されたくなかったし、干渉もしたくなかった。
そうなるともうただの馴れ合いで、毎日楽しいことだけ搾取して笑い合ってバイバイする、浅く薄ぺらい関係しか残らない。
幸い、ダチンコ達は言ってくれる。
『サイモンといるとウケる』
ってな。
その薄っぺらくてお手軽な認めてもらえてる感が心地良かった。
それ以上にも以下にもならない自分が一番ずる賢くてつまらない人間だってのは解ってて、だからって今更、都合よく深い仲になれるわけもない。
一緒に笑い合うって一番大事なことだよな、って表面上で自分を慰めながら、友達として誰かに慰められて、信頼して、喧嘩してまた仲良くなったり、なんてそんな自分は考えられなかった。
そんなココロが乱されるような忙しい毎日に入り込む気は到底起きなくて、それが尚更、情けなくて、辛い。
諦めに近いものは、今となってはただの「面倒」に違いなかった。
「……な、」
なにも知らないクセに偉そうなこと言うな。
って、一瞬口先を突いた。
でも、それを言ったところでなんにもならない。だってそれは「マジな話」だったからだ。
ダンゴはもう俺から視線を外してた。
気付いたら辺りは薄暗くなってて、透くような青い夕空が濃くなっている。
なにか言おう、と思ったのは、ただの反射思考だった。
結局、俺が口にしたのは。
「……今日はもう帰る」
それだけ。
体力気力消耗。
ギリギリまで引き絞られて、カラカラになった喉が痛い。
小さい頃、毎日のように感じてたココロのプレッシャーを、何年かぶりに食らった気分だった。
イヤホンを両肩にぶら下げたまま立ち上がった俺に、ダンゴは一瞥すらくれなかった。
でも。
「……また、明日」
それは、アドバイスだったのかもしれない。
俺が懲りずにダンゴをビビりの対象にして、また同じことを繰り返さないように。
道しるべのようなそれに俺は返事も返せず、錆び付いた音を出す重い扉を抜けた。
俺はこの時、青ざめていたのかもしれない。
じわじわとひた隠してた「汚点」を言葉にされていく恐怖。
自分から仕掛けたくせに、全く、ガキだよな。