臆病なサイモン






「あ、親戚か。なんかそれアリっぽい。オイラも詳しくは知らねーんだけど、居候はマジらしいよ」

イヤーンッ!禁・断!

とかノンキなダチンコは爆笑してる。

まあ、思春期の男女がひとつ屋根の下ってフレーズには「なにかがありそう」な予感がするよな。

でも、片方はあのダンゴだ。
なにが起こるって…あんなカワイゲノナイ女子相手になにも起こらねえよ。
妙に大人びてるから、距離的な壁は感じるだろうけど。

(……あ、)

頼んだメロンソーダ啜りながらちょっと考える。

『君と同じ理由だよ』

初日、解ったような顔でダンゴは俺にそう言ったんだ。



『――時間稼ぎ』

(……居候だから家に居づらいとすると)

屋上で時間潰しをしてるのも頷ける。
いくら親戚っつったって、仲良い奴なのかも解んないし、ダンゴって口下手っぽい要素あるし。

(なるほどね)

居候宅に帰って同級生と顔合わせるのが気まずい、ってんなら、ガッテン辻褄が合う。



「……なんでぇ」

そんな理由か。

案外つまんなかったな。なんてメロンソーダ一杯程度の思考は片付けた。

あとでそれを死ぬほど後悔するとも知らずにね。

ほんと馬鹿だよね、俺って。









「よっしゃ、歌ったー!」

こんだけハイテンションの野郎共に三時間てのは短い時間。

それでも、さんざマイク回して回して歌いきった俺らが外に出た時には、街は完全に「夜」になっていた。

スマホで確認したら九時過ぎ。
補導されないように行こうぜ、なんて笑いながらまるきゅーを意味もなくぶらつく。

ざわざわ。眩しいくらいのライトの下で、ディスプレイに負けないくらいきれいに着飾った人達が行き交ってゆく。制服のスラックスにティーシャツ姿の俺達のようなガキんちょだって、たくさん居る。

そんな中には、俺みたいなアタマした奴だってたくさん。
それなのにやっぱ別モンに見えちゃうのはアレかな、やっぱコンプレックスだからか。

故意と、過失とじゃ、全然ちがう。

当たり前だけどさ。

そこら中に置かれた鏡にヒヨコヘアが写る度、無性に拗ねたくなるのは俺がガキだからだ。

(高校に上がったら、なんか変わるのかなあ……)

ま、切望しても希望しといても、先のことなんて解んないけど。



「あの子、カワウィーウィー!」

明らかに歳上だろって女の子に向かってダチンコが叫ぶ。

若いって、すげぇ。






< 60 / 273 >

この作品をシェア

pagetop