臆病なサイモン
それは俺をバカにしてる目じゃなかった。
おふざけで手を握ってるわけでもない。
「…当てるよ」
深呼吸したダンゴに緊張が走る。
俺はずっと恐れていた。
他人に触れられて自分の内面がドロになって流れ出すことを。
いつもいつも表面だけ取り繕って、誰の信頼にも答えられない薄ぺらい自分が暴露されることを。
だからってこの歳になってテレパシーなんか信用してない。
笑顔を浮かべる術も、人付き合いのルールも、ヒトの気持ち考えも、あの頃よりずっと解ってるつもりだ。
小さい頃、あんなに避けていた他人とのスキンシップだって今じゃ珍しくない。
ダチンコ達と当然のように肩を叩き合ったり、「よぅブラザー調子どぉ?」なんて拳をこつんとぶつけあわせたりもしてる。
今更、テレパシーなんか信用してないんだぜ、俺は。
なあ、ブラザー。
「…『そろそろサイモンからダニエルに改名したい(かもしれない)』」
でも、ダンゴの目は真剣だった。
…言ってることはおふざけ以外のなにもんでもないけどな。