ロープ
「危うく、今度の極秘計画がヤツらに漏れるところだった」
「それにしても、マヌケな女だぜ」
男はロープを握っていた両手をはたきながら、「橋を渡ったら逃亡がバレるから、川を直接渡っていこうとしたら、土手の斜面のぬかるみで滑ってそのままドボン…」
「予想外の出来事に面食らって、パニクって、溺れやがンだからなァ」
「あの辺りが湿地帯になっていることも知らねェで、ナニがスパイだってんだ」
男は女の亡骸に、ペッと唾を吐きかけた。「万が一助かってトンヅラされちゃァマズいから、総統の許可なくシメたけど、べつに問題ないよな?」
「おう、大丈夫さ。取り逃がしたわけじゃねえンだからな。逆に褒められるぜ、よくぞ計画の機密を守った、ってな」
「だがよ、今度の計画、マジで大丈夫か?こんな女がモグリしてたくらいだ、“向こう”だってかなり本気でこちらに探りを入れてるってことだぜ」
「そうだな」
男は腕を組むと、「もう一度協議する必要はあるかもな…。よし、とりあえず総統に相談してみよう」
「おう。…っと、コイツどうするよ?」
男は顎で女スパイの亡骸を示した。
「川に棄てちまえ。どうせ溺れてたんだ。続きを楽しませてやれ」
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