K・o・M〜Key of Mind〜


男の思考回路が停止した。




「思い出せない。

俺…誰だ?

記憶が…ない。」


男は、記憶がないにもかかわらず、慌てずに手がかりを探しはじめた。



探して見つかったものは、

煙草とライター、さっきの新聞、写真。鏡。

それだけだった。

期待していた、クローゼットも空。


手がかり無し。

食料もなければ、服も着ているスーツだけ。


俺は、何者なんだ?

手錠が掛けられてしまっているため、安易に外にも出れない。

このまま餓死を待つのか?

鏡を覗き込み、自分と向き合う。

それを見て気付いた。

「おかしい。」

髭がまったくのびていない。
鏡でも確認したが、顔、体付きからみて、二十代半ばくらいだろう。
髭がまったくのびてないのなら、記憶を無くしたのは、多く見ても二十四時間以内くらいか?
二十代も半ばに差し掛かれば、一日経てば少なからず、髭は多少でものびる。
他人が髭を剃ってくれるなんて、まず考えられない。

「ってことは、連れてこられたのか?」


どう考えても、好ましい結論には行き着かない。
色々と考えていると…





ドンドンッ!


扉を叩く音が聞こえる。


「開けるぞっ!」

外から聞こえたのは、男の声で、返事をする間もなく…

がちゃっ。

扉が開けられた。
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