FLOWER
「それで…燈織のことなんだけど」
控え室に入ってイスに腰掛けると、悠平はすぐに喋りだした。
―…『燈織』って、私は悠平から彼女の名前は聞いてないよ?
本当は私が見てたこと知ってて―…?
「お見合い…しなきゃいけなくなったんだよね。親父がどうし…」
「知ってる!…知ってるから…もう、いいよ…」
リオはギュッと目を瞑って悠平の言葉をさえぎった。
悠平は驚いた様子も見せずに『そっか…』と呟いた。
「…っ、けど私…」
そう言って言葉に詰まった。
ここで「嫌だ」と言ってしまえば、悠平を困らせてしまうだけだということに気づいてしまった。
「俺は…別れたくないんだけど」
私が俯いた後、そう呟いたのは悠平だった。