セクハラ彼氏は会社の上司


着いた、と言われ下に向いていた顔を上げれば、

前に何度か秋さんと来たことがあるお店だった。


「どっかいいとこないかな、って思ったんだけど、行きなれたとこがいいかなーって」

そんな秋さんにまたときめきながらも、お店の中へ入った。


ごちゃごちゃと結構混んでいたが、二人ということもあり、個室へ通してもらった。


「個室があると静かで落ち着くね」

そう秋さんが笑いかけてくるも、あたしはぎこちなくしか笑えなくて。

あー……駄目だな、なんて思っても、結局はなにも出来ない自分に、少し腹が立った。


せっかく二人でいるのに、全然楽しい会話出来ない。


「……玲那?」

「えっ、あ、はいっ!!」


ずっと名前を呼ばれていたことに気付かず、素っ頓狂な声が出る。


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