セクハラ彼氏は会社の上司


秋さんは相変わらずムスッとした声で、

「俺の玲那に手を出したから」

って言うからあたしは慌てて言った。

「で、でもあたしがちゃんと断らなかったからっ……」

「玲那は優し過ぎ」

「ご、ごめんなさい……」


秋さんはあたしをギュッと少し力を強くして抱きしめた。

なんであたし、抱きしめられてるんだろ……


少し疑問に思うけど、心地いい秋さんの胸の中は、あたしを落ち着かせてくれた。


「全部が全部玲那が悪くないよ。だから、一人で抱え込まなくていい」

「でも……」

「友達の紫苑ちゃんも、ちゃんと話したら許してくれるよ」

優しく言う秋さんに、あたしはただ頷くしかなかった。


ああ、大人だな。

なんて秋さんの胸の中で思ってみたり。


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