リベンジコレクション
このまま一日を終わらせたくない。

見返してやりたい。

鏡に映る自分の姿を見据えて、ゆっくりと深呼吸をする。

「よしっ!」

 スッと背筋を伸ばしてパウダールームから出ると、カウンターに肘をついていたソウが真っ先に気づいた。

少し驚いた表情を浮かべてから、面白そうに笑みをつくる。

「いい顔してんじゃん」

 おそらくメイクを直したことではなく、表情を指しているのだろう。

パウダールームに入る前の私は、どこか心が挫けていた。

メイクを直し、ようやく人心地ついて初めて、あつし君に反撃してやりたいと思えたのだ。

「じゃあ行くか」

 ソウはカウンターに預けていた身体を起こすと、和風美人に目を向ける。

「まどか、あれ頼むな」

「ええ。仕上がったらお店に持っていくわね」

 和風美人はまどかさんというらしい。

私は慌てて貸してもらったポーチを差し出す。

「あの、これ、ありがとうございました!」

 まどかさんは白くて細い手でポーチを受け取ると、私の顔を見て小さく息をついた。

「元気が出たみたいで、よかった」

 凛とした美貌が笑顔を浮かべ、ふんわりとした優しさを醸し出す。

まるで花が咲くような、艶やかな微笑み。

この人は本当にすべてが美しいんだと、私の拙い女としての勘が働いた。

嫌味なところなどひとつもない、心からの言葉だとわかったのだ。

例え幼い子供であろうと、女なら同性の本性には鋭いものである。
< 17 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop