リベンジコレクション
「またぜひお越しください。お待ちしております」

 ソウの言葉に、お客さんは満ち足りた笑顔を浮かべて去っていった。

「ごめん、待たせた。奥に行こうか」

 お客さんが店から出るのを見送ると、ソウはすぐに私へ謝ってくれた。

忘れられていたわけではないらしい。

ちょっとほっとする。

だが、そこから先がまた長かったのだ。

一歩進むたびにソウがお客さんに呼び止められ、ソウも店長として快く応じる。

外から見てもかなり客が多いとは思ったが……まさかここまで多いとは思わなかった。

客層は男性6割女性4割といったところだろうか。

ざっと見てもメンズものしか売っていないが、その割に女性客が多い。

まあ、ソウやお兄さん店員を見た今では、女性客の多さも頷けるが。

だがソウを呼び止めるのは女性客だけではない。

最初にソウに声をかけた客だけでなく、ほかの男性客からもひっきりなしに声をかけられる。

コーディネートのアドバイスから今日の天気に至るまで、とにかくお客さんはソウと話したいらしい。

店長大人気である。

そんな人気者店長にくっついている女の存在は気になるようで、特に女性客からじろじろと視線が突き刺さる。

お客さんの波を越えて、従業員専用の扉にようやくたどり着いた時にはもう、邪魔をしてすみませんと謝りたい気分だった。

従業員専用扉の前に立つと、女性客どころか男性客からもがっつり視線を向けられていた。

この状況にまったく動じていないソウは、私を見下ろして笑う。
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