月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
今度からあたしも警視総監の姪であることを全面的に押し出してみようかしら。

…まぁそんなことしたら義理の兄を心底慕っている両親に怒鳴りつけられるのがオチだけど。

大体が達郎から何を言われるかわかったもんじゃない。

絶対あたしがムカつく事言うに決まってる。

などと馬鹿なことを考えてるうちに部長室に1人の男性がやって来た。

「酒井です」

扇署捜査一課長はそう言って深々と頭を下げた。

あたしは思った。

この人は達郎がいなくてもあたし1人に対し同じ態度をとっただろう。

そんな雰囲気を身にまとっていた。

年齢は50歳ぐらい。

顔には実直さが深いシワと共に刻まれている。

しかし顔には柔和な笑みを浮かべていた。

「それでは酒井くん、後は頼んだよ」

「わかりました」

せわしない本部長とは正反対に酒井課長は落ち着いたものだった。

あたしたちは酒井課長の運転で、事件の起きたB市の扇町に向かうこととなった。

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