月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
その在処を聞き出すために取調室に入ったが成果はゼロだったという。

「雑談には応じるんですが、いざ金の話になると黙り込んでしまう。あれには参りました」

「松村とはどんなことを話したんですか」

「もっぱら子供の頃のでしたね」

「具体的に言うと?」

「一緒にあんな遊びをしたな、とかそういったことです」

松村も小学生の頃はそれなりに活発な子供だったという。

「草野球に鬼ごっこ、あとは宝探しゲームなんかもよくやりました」

「宝探し?」

宝探しという言葉に思わず反応してしまった。

「宝といっても各自の持ってたベーゴマやメンコでしたけどね」

車が再び赤信号で止まり、酒井課長は振り向いて言った。

「ベーゴマやメンコって知ってます?」

あたしたちはうなずいた。それで遊んだ記憶はないけれど、どういうものかぐらいは知っている。

「そいつを遊び場にしてる空き地に埋めて隠し、他の人間が探すんです」

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