月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
見つけたら宝はその人間のもの。

そんなルールのゲームだったという。

「松村はそのゲーム得意だったんですか」

「得意でした。得意で、好んでやってました」

酒井課長の返事に達郎は唇を尖らせた。

頭の中で思考を巡らす時にやる癖だ。

信号が青に変わり、酒井課長は車を発進させた。

「取り調べの時、私は言いましたよ。これは宝探しゲームじゃないんだ、正直に金の在処を言えってね」

「そうしたら松村はなんて言いました?」

「欲しけりゃくれてやる。探してみろ。すべてそこに置いてきた」

…なんか人気海賊漫画に出てくる海賊王のセリフそっくりだな。

「あいつが死んで、こちらの面目丸つぶれと思った矢先にあの手紙が出て来たんです」

酒井課長の声に力がこもる。そしてハンドルを握ったままこちらを向き

「お願いします、絶対に奪われた300万をみつけて下さい」

と懇願した。

「前を見て!」

あたしはうなずくより先に絶叫した。

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