月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
酒井課長は鍵を取り出して店のドアを開けた。

昔ながらの引き戸とカーテンをひいて店の中に入る。

一階が店舗で二階が住居という体裁になっているそうだ。

10坪ほどの店内には空のショーケースが並んでいた。

壁には
「おでん一串50円」
「ラムネ150円」等の貼紙や特撮ヒーローやアニメのポスター。

片隅に積まれた段ボールにはスナック菓子の名前があった。

「松村は店を継いだあと雑貨屋を駄菓子屋に変えたんですよ」

子供たちとは「お客」のことだったのか。

達郎は店内をぐるりと見渡すと

「松村は子供好きだったんですか?」

「取り調べの時それっぽいことを言ってました」

「だから店を駄菓子屋にしたんですかね」

「それもあるかもしれませんが、あいつ自身、駄菓子屋が好きだったんだと思います」

酒井課長は懐かしむような顔になった。

「10円玉を握りしめて駄菓子屋に行く時は、あいつはいつも先頭に立ってましたから」

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