月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
二階には六畳二間ほどのスペースがあったが、必要最低限の生活用品しかなかった。

「両親が他界してからは寝るためにしか使ってなかったようです」

「料理は?」

「もっぱらカップラーメンか外食だったそうで」

はぁ。典型的な独身男性の食生活ね。

そんな感想を心の中でつぶやいてると、窓から外を眺める達郎の姿が目に止まった。

「あそこが扇町公園ですか」

酒井課長は近くという言い方をしていたが、本当に目と鼻の先だった。

歩いて10秒といったところか。

公園内の様子はここからでも見てとれた。

「あんま人いないな」

「そりゃそうよ」

あたしは腕時計の日付を見た。

「平日の午後イチだもの、子供は学校に行ってるわ」

「…明日は土曜だっけ」

あたしはまた腕時計の日付を見た。

「今日は金曜日。明日は土曜日よ」

「そうか」

達郎の唇が尖った。

「なに、どうしたの?」

あたしは胸騒ぎがした。

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