月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
「当たり前でしょ」

お目付け役としての勘が緊急警報を発令した。

「じゃあさ、こっち来るついでにアイスを5人分買ってきて」

「アイス?」

しかも5人分?

甘党の達郎はアイスも大好物だが、なぜ5人分なのだろう。

「ピノでもハーゲンダッツでもいいからさ」

「…ガリガリ君かホームランバーにしなさい」

「なんでもいいや。そろそろ酒井課長が戻るはずだからよろしくね」

そして電話は切れた。

緊急警報は相変わらず鳴り続けている。

「日野巡査」

呼ばれて振り返るとそこに酒井課長がいた。

課長は滝のように流れ落ちる汗を、ハンカチでしきりにぬぐっていた。

長い間、炎天下の公園にいたせいだろうか。

それとも別の理由だろうか。

できれば暑さのせいであってほしい。

「行きましょう」

酒井課長があたしを促した。

「達郎さんが待っています」

ああ、やっぱり警視総監の名字は口にしづらいのねーなどとアホなことを考える。

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