月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
「でね、近ごろ物騒でしょう。なのであたし声をかけようとあの人に近付いたのよ」
チワワ婦人はその外見に反して熱き正義の心の持ち主のようだ。
こういう人が一人増えただけで世の中はうんと良くなる。
でもその正義の刃が、あたしのイトコに向けられるとは夢にも思わなかったが。
「でもそうしたら、逆にあたしが警察の人に呼び止められたのよ」
その警察の人とは酒井課長のことだろう。
「あの人、ボランティアで警察の捜査に協力してるんですってね」
チワワ婦人は声をひそめた。
「ね、どんな事件の捜査してるの?」
眼鏡の奥の瞳に、好奇心という名の光が宿っていた。
あたしは黙って自分の警察手帳を見せた。
「警視庁のかた!?」
チワワ婦人は目を丸くした。
「わざわざ本庁の刑事さんが来るぐらいなんだから、大きな事件よねぇ」
「申し訳ありません。守秘義務がありますので」
あたしは深々と頭を下げて、きびすを返した。
チワワ婦人はその外見に反して熱き正義の心の持ち主のようだ。
こういう人が一人増えただけで世の中はうんと良くなる。
でもその正義の刃が、あたしのイトコに向けられるとは夢にも思わなかったが。
「でもそうしたら、逆にあたしが警察の人に呼び止められたのよ」
その警察の人とは酒井課長のことだろう。
「あの人、ボランティアで警察の捜査に協力してるんですってね」
チワワ婦人は声をひそめた。
「ね、どんな事件の捜査してるの?」
眼鏡の奥の瞳に、好奇心という名の光が宿っていた。
あたしは黙って自分の警察手帳を見せた。
「警視庁のかた!?」
チワワ婦人は目を丸くした。
「わざわざ本庁の刑事さんが来るぐらいなんだから、大きな事件よねぇ」
「申し訳ありません。守秘義務がありますので」
あたしは深々と頭を下げて、きびすを返した。