月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
チワワ婦人が何を誤解しようと、さほど大きな問題ではない。

しかし達郎が所轄の捜査課長を(結果的に)見張り役にして聞き込みしてたっていうのは…。

なんかお目付け役という名前が重くのしかかってきた。

あたしに気づいた達郎は笑顔で手を挙げた。

「アイス買ってきてくれた?」

呑気に言うのでコンビニ袋を目の前に突きつけてやった。

「サンキュー」

まったく動じない。

あー、腹がたつ。

「おーいみんな。約束のアイスだ」

達郎のかたわらで何かをのぞきこむようにして輪を作ってた少年たちが、アイスという言葉に反応した。

目をキラキラさせながらガリガリ君を受け取る。

「お姉ちゃん、ありがとう!」

少年たちは口をそろえて言った。

…可愛い。

「どういたしまして」

笑顔を返すと達郎が

「よし、練習通りに言えたな」

練習させてたんかいっ。

< 28 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop