月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
残りの一割だっておいおい解いていけばいい。

「わかったわ」

あたしは酒井課長と同様に覚悟をきめた。

「じゃ出発だ」

達郎はベンチから立ち上がり、アイスを食べ終えて再び輪を作った少年たちに声をかけた。

「君たち、オレが戻ってきたらそれ返してね。五時までに戻らなかったらさっきの警察のおじさんが代わりに来るから」

…今度は酒井課長に何をさせるつもりだオイ。

あたしは達郎の言った「それ」が気になって輪の中をのぞきこんだ。

「…達郎、これ真くんのでしょ」

あたしは輪の中にあったものを指さした。

「兄さんに頼まれて代わりに買いに行ったんだけど、ちょうど良かった」

兄さんとはひとまわり以上年の離れた警視正のお兄さんのことで、真くんはその息子。

確か今年で10歳になるはずだ。

「あんた今日じゃないと調べようがないって言ってたの、もしかしてこれを手に入れるためだったの?」

「そうだよ」

達郎はうなずいた。

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