月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
「そこで駄菓子屋に通ってた子供たちを探すために公園に行ってみた」

そしてお目当ての子供たちを見つけ、あの一文を見せたところ

「出るわ出るわ『知ってる』の声が」

「ちょっと待って」

あたしは目を丸くした。

「じゃあこの文に出てくる地名は子供たちが考えたものなの?」

「およそ九割はな」

また九割かい。

「たとえばオレたちがさっきまでいた公園。あそこを子供たちは別の名前で呼んでる」

「なんて名前?」

「噴水公園」

そのまんまじゃない。

「子供ってのは名前を自分の覚えやすいように変換する才能を持ってるからな」

「友達にあだ名つけるようなもんかしらね」

達郎はうなずいた。

「『つむら屋』って名前も子供たちに言われて改名したものらしいぞ」

「そうなんだ?」

子供たちが呼びやすいようにと松村が考えた名前じゃなかったんだ。

「もしかしたら松村は、子供たちとのそういったやり取りから今回の犯行を思いついたのかもな」

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