月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
達郎がさっきの子供たちから訊いたことによると松村は犯行の一か月ほど前から子供たちに変わった地名は知らないかと訊き回ってたらしい。

「松村にとってはメインはこっちなんだろう」

「メイン?」

「重い病に冒されて、最後に何かデカいことをやってやろうと思った…松村は犯行の動機についてそう語ったんだよな」

あたしはうなずく。

公園を出てからもずっとついて回っていたセミの声が止んだ。

「そのデカいことっていうのは、現金を奪うことじゃなくて、その奪った現金を隠し通すことだったんじゃないのか」

脳裏に昨日の酒井課長の言葉が浮かんだ。

「それって宝探しゲームのこと?」

「そうだ」

酒井課長の言葉がさらによみがえる。

松村は宝探しゲームが得意で、心理の盲点をつく才能があった…。

ハッとなったあたしは思わず歩みを止めた。

「オレたちは今、松村の仕掛けたゲームに付き合ってるワケだ」

同じく足を止めた達郎が微笑を浮かべた。

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