月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
くだらないとは思うけど言われるとだんだん気になってくる。

あたしはあたりを見回した。

人通りはない。

しかも今日はパンツスーツだ。

あたしは石垣によじ登った。

立ち上がると当然、視界は高くなる。

あたしは小さい時、ジャングルジムに初めて登った時のことを思い出していた。

「レミ」

顔を向けるとそこには、したり顔の達郎がいた。

『面白いだろ?』

目がそう言っていた。

なんかくやしくなったあたしは

「はやく進みなさいよ」

と言って、その背中を小突いた。

「やめろ、落ちる」

おどけた仕草で達郎は言った。

「ワニに喰われたらどうすんだ」

「いっそ喰われちまえ」

あたしは冗談とも本気ともつかない口調で言ってやった。

「で、ここ通り抜けたら『しんたの家』に続くわけね」

そう訊くと達郎は地図を取り出した。

のぞきこむと、地図を見つめる達郎の顔はほころんでいた。

「なにニヤニヤしてるのよ」

「だってさ♪」

< 38 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop