月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
語尾に♪マークが付くとは、かなり上機嫌だ。

達郎をここまで上機嫌にさせる『しんたの家』ってなんだ?

首をかしげていると坂道が終わった。

石垣から降りると達郎は喜色満面といった笑顔で正面の建物を指した。

建物は平屋で、外には赤い布をかけた床机が置いてある。

「あれが『しんたの家』だ」

建物には『甘味処』という看板がかかっていた。

なるほど、大の甘党である達郎なら上機嫌になって当たり前だ。

でもここのどこが『しんたの家』なんだろう?

達郎が店の前に行き、一本のノボリを指した。

「レミ、この字はなんて読む?」

そのノボリを見てあたしはあっと叫んだ。

そこには『心太あります』と書いてあったのだ。

「ちょ、『しんた』ありますって!?」

どういう意味、と戸惑うあたしに達郎は言った。

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