月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
平凡な毎日を好み過ごしていた松村にとって、その宣告はあまりにも衝撃的だった。

愛してやまない平凡な日常を奪われ、死への恐怖が重なり、松村は自暴自棄になった。

自分の平凡な過去を思い返し

「人生の最後に何かやってやろうと決意した」

取り調べに対し松村はそう供述したという。

死刑になりたいからと殺人を犯す大馬鹿者がいる昨今、松村のとった行動は理解できなくもない。

しかし松村の行動を理解しようとしまいと、被害者のパチンコ店側にしてみればどうでもいいことだった。

パチンコ店側としては奪われた300万円を取り戻したかった。

しかし松村は強盗の容疑は認めたものの、金の在処については一言もしゃべろうとはしなかった。

警察、検察の取り調べにも、法廷においても彼は黙秘を続けた。

このまま隠匿を続ければさらに罪が重くなるという弁護人の説得にも耳を貸さなかった。

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