月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
「すげーくだらない理由だぞ」

そう言って達郎が指さしたのは一枚の看板。

また看板かと思いながら見たそこには

「おこと教室」

と書いてあった。

「?」

あたしは首をかしげながら看板に近寄る。

間違いない。

確かに「おこと教室」とある。

もう一枚、別の看板があり、そこには

「琴曲教授」

とあった。

看板を出しているのは、いかにも品の良さそうな門構えをした家で、周辺の新興住宅とは一線を画している。

琴のお師匠さんが住んでても違和感はない。

だがいま問題はそこにはない。

その時ふと、ある考えが浮かんだ。

その考えは看板を見たと同時に思いつきそうなものだった。

だが、あまりにもくだらな過ぎて逆に思いつかないものだった。

「あのさ達郎」

あたしは浮かんだ考えを口にする決意を固めた。

「これって『おこと』と『おとこ』をひっかけたシャレ?」

それが『男の道』の正体?

「正解」

達郎は淡々と言った。
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