月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
「叩いたとこ、赤くなってるぞ」

「いいのよ」

あわてて首を振った。

そんなことされたら余計に顔が赤くなる。

幸い達郎はあたしの提案を受け入れ、柵に沿って歩き出した。

あたしは携帯を取り出して検索画面を開いた。

そして『謎の屋敷』で、ググってみる。

だが、めぼしい検索結果には行き着かなかった。

「やっぱブラームスの小径みたいには見つからないか…」

そう独り言をつぶやく。

その時、隣を歩く達郎の足が止まった。

「レミ、いまなんて言った?」

「ブラームスの小径みたいには見つからないって言ったんだけど…」

「ブラームスの小径ってなんだ」

あたしはブラームスの小径で検索をかけ、画面を達郎に見せた。

「原宿にある通りの名前よ」

達郎は画面をまじまじと眺めた。

「これで径(みち)って読むんだな」

感心した風に言う。

「心太をところてんって読むようなものかもね」

達郎はうなずきながら携帯から視線を外した。

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