月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
死が間近に迫っていた松村にしてみれば、罪の軽重はどうでもよかったのかもしれない。

そしてついに松村は金の在処を言わぬまま先週この世を去った。

被疑者死亡で終わりかと思われた事件だが、そこから急展開があった。

松村の遺品の中から一通の封書が見つかった。

「金の在処」

封筒の表にはそう書かれていた。

その封筒の中にあった一枚の便せんにしたためられていたのが「公園を出て…」から始まるあの意味不明の文章だった。

頭を悩ましたA県警から警視庁に捜査協力の要請が来て、結果あたしがこの件を担当することになった。

無論あたしにこんな暗号めいた文章を解読できるワケがない(いばれることじゃないけど)。

暗にある男の登場を促しているのだ。

あたしは愛用のi-podを手にし、イヤホンを耳にして、お気に入りの曲を選択した。

「やっぱ達郎の出番ね」

そうつぶやいた時、イヤホンからヴァン・ヘイレンの『ジャンプ』が流れてきた。

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