月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
「私はあなた方が今回の件を担当すると聞いた時、このゲームの終わりを予感しました。そして達郎さんが子供たちに聞き込みをはじめた時、それは確信に変わりました」

あたしは思った。

あの覚悟の表情は、全てが暴かれることを覚悟した表情だったのだ。

あたしを松村の家まで案内した時の、暗号を解読してくれという言葉は、警察官としての良心と、松村の友情との板挟みにあった苦しみから生まれた、必死の言葉だったに違いない。

「そちらに部下を向かわせます」

酒井課長はどこか晴々とした口調で言った。

「日野巡査。暗号を解読してくれてありがとうございましたと、達郎さんにお伝え下さい」

そう言って電話は切れ、あたしは呆然とするしかなかった。

「どうした、レミ」

達郎の声で我に返ったあたしは、全ての事情を話した。

「やはり酒井課長が関わっていたのか」

畑の立て札を眺めながら達郎は言った。

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