月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
『最近の捜査一課は宝探しもやるのか?』

受話器からからかい混じりの声が聞こえてきた。

かすかに頬がひきつったが、この程度で腹をたててたら達郎の目付け役はつとまらない。
深呼吸してからたっぷり余裕を込めた声で

「捜査一課が強盗事件を扱って何が悪いのよ」

と言ってやった。

あたしの所属する捜査一課は『強行犯』つまり殺人・強盗・傷害等の事件を扱う。

今の任務は奪われた現金を見つける事とはいえ、事件そのものはれっきとした強盗事件なのだ。

司法一家に育った達郎にこの理屈がわからないはずがない。

『そりゃまそうだな』

こちらが拍子抜けするほどあっさりと認めた。

もっともそうしてもらわなければ話は進まない。

「じゃ引き受けてくれるのね?」

今まで捜査協力を断られたことはないのだが、一応訊いてみる。

すると

『A県警の協力は得られるのか?』

と逆に訊き返された。

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