月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
「向こうから要請があったんだから協力は得られるはずだけど」

『なら安心だ』

「なにが安心なの?」

『地元の詳細な情報が得られるからさ』

あたしは訊いてみた。

「松村の奪った300万はA県にあるって言いたいのね?」

『まぁ十中八九。範囲をB市までせばめてもいいかもな』

事件の概要を説明し終えたのは先ほどのこと。

わずかな時間でなにをつかんだのだろうか。

『その松村武って男は生涯B市から出なかったんだろ』

「そうよ」

『なら金を隠したのは土地カンのある唯一の場所、B市のはずだ』

「じゃB市に行ってみるわけ?」

『その通り。手掛かりはあるはずだ』

それはあたしも考えた。

「でもワニの谷や男の道なんて地名はB市には無いわよ」

ネットだけでなく、地図や電話帳も引っ張ってみたが、該当する名前はゼロだった。

『レミ』

達郎は諭すような口調で言った。

『刑事が現場に足を運ばないでどうする』

う。マジで正論。
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