月と太陽の事件簿7/ブラームスの小径(こみち)
『つむら屋』
翌日、あたしと達郎はA県B市に向かった。

その途中にあるA県警に出向いたところ、A県警の刑事部長じきじきの出迎えを受けた。

アポをとっておいたとはいえ、刑事部のトップが自ら出てくるとは。

もっとも達郎の来訪も告げていたから予想はしていたけど。

元法務大臣の孫で、現警視総監の息子である超VIPが来るとあっては恐縮するのは向こうの方だろう。

実際、達郎を連れて他署の管轄に出向く時は必ずその旨を伝える様にきつく言われている。

「このたびはわざわざ御足労を…」

案の定、刑事部長は気の毒なくらいガチガチになっていた。

こういう時に間に立つのがあたしの役目だ。

「本件の担当者の方と会いたいのですが」

そう切り出すと刑事部長はホッとした顔つきになった。

「事件は扇署管内で発生しまして、現在そちらの捜査一課長を呼んであります」

至れり尽くせりとはこのことか。

だいぶ慣れたとはいえ、達郎効果のすごさをまざまざと感じた。

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