Lの境界線

やっとの思いで坂を上りきると、悠然と広がる大海原が視界に入る。
水面は静かに波打ち、日の光を浴びてキラキラ光っていた。

上り坂の次は、下り坂。若干角度が高めなので、ハンドル操作さえ誤らなければ、下ったままのスピードで、すぐに海につく。

「ラストスパートだ」
「一気に行っちゃう?」
「いいね~、風を感じますかっ」

ハンドルを握り締める。
後ろからはやしたてるシュンとケンをチラリと見て、地面を蹴ろうと足に力をこめる。

その時だった。

「そこの三人乗り!!止まれ!!」
「げっ」
「マコト!!さっさとズラかるぞ!!行け!!」
「……おーよ!!」

声の主が警察だとわかった瞬間に、シュンが目を細め、ケンが焦るように大声を出す。
パンッ と背中を叩かれ、少しだけ間を空けて返事をした。
アスファルトの地面を、履き古したスニーカーが蹴る。

「こら!!待て!!」

後ろで坂を上って来ている警官をシカトして、自転車は風を切るように走る。俺達を乗せて。

「やっほーい!!やべぇ!!めちゃくちゃ気持ちいい!!」
「最高!!愛してるぜお前らー!!」
「意味わかんねーよ!!お前に愛されても嬉しくねーし!!」

笑い声混じりに上がる叫び声。
馬鹿みたいに騒ぎながら、俺は頭の中でぼんやりと考える。

なぁ、お前らに会えてよかったと思うんだ。
馬鹿やることがこんなに楽しいなんて思わなかった。
高校入って、忙しい毎日に嫌気がさして、失敗ばっかりで、全部嫌になって部活をやめて。
淡々と過ごしてたら、一年が経っていた。

一年間、淡々と過ごしていたはずだった。
でも、な。
淡々と過ごした一年間の中には、常にお前らがいた。日々は淡々としていた、でも、思い出はいつも騒がしくて、楽しかった。
厳しい規律に自由を奪われても、大人の理不尽な言い分に従わなければいけないときも、テストでヤバイ点数とってイライラしてても。

お前らが居てくれたから、きっとここまで来れたんだと思う。

良い悪友に出会って、好きな人も……できて。
なぁ、俺、今幸せだよ。
ありがとう、最高の悪友達。
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