Lの境界線
『太陽、英雄、君じゃなきゃ』

「好きです」

夏が終わる頃の、涼しげな空気の中だった。
鈴の音のように凛と響いた僕の言葉を受け、わかっていたかのように、その人は長い睫毛を伏せた。

「うん」

頷き、彼女は笑う。
剥き出しの青空の下で佇むその人はやっぱりとても綺麗で、ああ、届かないんだな、と思った。
どんなに高い場所にのぼっても、太陽には手が届かない。
どんなに好きでも、僕はこの人には届かない。
そう、まるでこの場所、学校の屋上から太陽に触れることができないかのように、それは当たり前のことで。

そう、届かない。だって、彼女は。

「私がケンちゃんと付き合ってることは、知ってるよね?」

わかってます、と力強く頷いて見せる。

人間は、手の届かないものにほど惹かれるものだと思う。
幼い頃から姉のように僕を可愛がってくれたヨーコ先輩には想い人が居て、既に想いを遂げてしまっていて。
ヨーコ先輩には、ケン先輩がいて。

「それでも、僕は」

あなたが、好きなんです。

太陽に近づきすぎた英雄は地へ落とされた。
叶わない恋ならば、いっそ僕の想いも落としてほしい。
僕は貴方の英雄になる、だから貴方は僕の太陽でいて。僕の翼を溶かして、地に落としてしまってください。

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