Lの境界線

かつて彼が彼女に言った告白の言葉を否定する。

『俺は世界で一番俺が好きだ。でも、二番目に好きなのはお前だ。だから、お前は、お前が好きな俺を世界で一番好きになれ』

支離滅裂な愛の告白。
その意味を理解したとき、面と向かってそれを言ったケン先輩を、僕はかっこいいと思った。

でも、今はその言葉さえ否定する。

「好きなんです。どうしようもないくらい。好きなんですよっ!!」

叩き付けるように叫ぶ。泣きそうになった。

「僕じゃ……ダメなんですか」
「ダメじゃないよ」
「じゃあ……!!」
「私は、ケンちゃんじゃないとダメなの」

彼女が苦笑する。
その一言は僕の心に突き刺さる、が、同時に酷く冷静になって、落とされたんだな、と理解した。
翼は、溶けはじめる。

「二番目じゃないと、ダメなの」

ポツリ、と呟かれる言葉。真意はわからない。

「ごめんね」

「……いいえ、ありがとうございました」

ありがとう、突き放してくれて。
僕は無理矢理に笑う。どうしようもなく涙が溢れてきて、情けないと思った。

「でも、これだけは覚えていてください」

驚く様子の彼女を、泣き顔のまま真っ直ぐ見つめて、言う。

「僕だって、貴方じゃないとダメなんですよ」

そう言って笑ってみせる。
逃げるように背を向け、僕は屋上の入り口であるドアに向かった。

「かっこよくなったね、ショウちゃん」

背中越し、青空の下で、彼女が綺麗に笑った。



さようなら、初恋。
ありがとう、僕の太陽。
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