Lの境界線
予想通りの沈黙が流れた。
見ると、マコは目を見開いた間抜け面で私を見上げている。
あら?なんかこっちのが気まずくない?
私はそう思い、少しだけ考えた結果、マコに事実を告げることにした。
ええい、もうどうにでもなれ。何がかはわからないけど。
「さっき告られた。で、フッてきた」
「はぁ?」
簡潔な説明の後、マコは意外な返事を返してきた。
まるで、信じられないという風な顔で。
「誰が」
「私が」
「アキラが?」
「うん」
「別のアキラさんと勘違いしてるんじゃ」
「この学年に女でアキラって名前は私しかいませんが。マコトくん」
まくしたてるようなやりとりの後、マコはやはり信じられないという風な顔で目を細めた。
「お前、女だったのか」
「ふざけんなアホ」
握っていた缶ジュースでマコの頭を軽く殴る。鈍い音がした。
全く、失礼な奴だ。
確かに私はその手の話題には縁がない。が、私だって女だ。そんな露骨にモテないみたいな言い方をされたら頭にくる。
ていうかこいつ、私を女として見ていないのか。
「……そうだったのか……」
「当たり前だバカ」
殴られた箇所を片手で撫でながらわざとらしく言うマコに冷たい視線を浴びせると、今日何度目かもわからないため息をついた。
人の色恋沙汰をこんな風に言うなんて。
罪悪感にさいなまれていた自分がバカみたいだ。