さうす・りばてぃー
第一話 新生活
 春。桜が咲く季節。出会いと別れの季節。

 そして、新生活の季節。

 つい先日、中学校の卒業式を終えた俺は、早くも新しい生活の準備に取り掛かっていた。

 入学式を前に、するべきことは山ほどある。

 俺はその日、買出しをしていた。

 新しく一人暮らしを始めるとなると、必要なものが多い。

 布団など最低限のものだけは家から持ってきたが、それ以外はすべてこちらで揃えないといけない。

 一通り買ったつもりでも、足りないものはいくらでもあった。

 冷蔵庫や電子レンジくらいまでは予想がついたが、シャンプーやゴミ箱などの小物までは気がつかなかった。

 その日、五回目の外出のために入口のドアを開けると、階段の音が聞こえた。
 建物の正面に取り付けられた階段を、誰かが下りているのだろう。

 やがて、その階段を下りてきた人物と、目が合った。

 俺と同じくらいの年の女性。

 軽く挨拶しようとして、俺は言葉を失った。

 俺だけではない、その相手も、目を丸くして俺を見つめている。

 次に出た言葉は、ほとんど同時だった。

「穂波?」
「ゆうくん?」

 それはお互い呼びかけでもあり、確認でもあった。
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