さうす・りばてぃー
 山道を、懸命に走る。

 彼女たちが、山頂方面に行ったのか麓方面に行ったのかもわからぬまま。

 雨に加えて、雷が鳴り始めていた。
 
 心臓がドクドクと脈打っていた。

 妙に胸騒ぎがする。

 頼むから無事でいてくれ。

 明かりは、二人の持つ非常用の懐中電灯のみ。

 風雨におびえた虫たちは、すっかり鳴き声を潜めている。

 耳に入るのは、地面を激しく叩く雨の音と、ゴロゴロと鳴る雷の音のみ。

 俺は達也とともに、穂波と星空の姿を探して、闇の中を疾走していた。

【第四話終 第五話に続く】
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