さうす・りばてぃー
 翌日。

 台風が通り過ぎたせいか、昨日までの風雨はすっかり収まっていた。

 まだ弱い柔らかな朝の日差しに照らされ、朝もやのかかる空気の中、俺は優雅に目を覚ました

 ――――というのは嘘で、起こしに来た女性軍(特に星空)に、文字通り叩き起こされた。

 顔面に枕をぶつけられ、ようやく目を覚ます。
 
 思うに、人の寝室にまで入ってくるのはマナー違反ではあるまいか。

 外から声をかけるくらいの余裕があってもいいと思う。

 そう抗議したが、
「何回外から呼んだと思ってるの?」
 と、星空に却下された。

 そして朝食を済ませた俺たちは、まずは宿のオーナーに謝りに行った。

 昨日、炭置き小屋のガラスを割った件だ。

 一応、怒られはしたものの、もう何年も使ってなかった小屋だし、人命もかかっていたからやむを得なかったということで、すぐ許してもらえた。

 俺たちはそれから、近くにあるという湖畔へと向かった。

 知は絵を描きたいということで、別行動をとっている。

 星空も、昨日の足がまだ痛むらしく、知とともに居残り。

 俺たちは四人で行動していた。

「わー、きれいです」

 その湖を見て、見由が声をあげた。

 緑に囲まれ、一面に広がる湖。

 湖面は、朝の光を反射して、キラキラと光り輝いていた。

「俺の心みたいにきれいだな」

 俺は湖に向かってそう言った。

「ほんと、きれいね」

「来てよかったな」

 穂波と達也が、口々に言った。

 あえなく無視される俺。

 ちょっと寂しかった。

 しばらく、湖の周りを散歩する。

 今日の見由は、ブロックチェックの柄の半そでシャツに、カーキベージュ色のスカートをはいていた。

 この子は、他の女性二人に比べ、スカートをはいている率が高いと思う。

 スニーカーをはいて、草の上でときどき楽しそうに体をくるくると回転させている。

 一方穂波は、黒いシャツの上にVネックのクリーム色のカットソーを着て、下はひざ下までのハーフパンツである。
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