さうす・りばてぃー
「おまえ、妹なんていたのか?」

 達也が不思議そうに俺を見る。

「うむ。一時間ほど前にできた妹だ」

「なんだそれ」

 達也はよくわからないといった顔をしている。それを無視して、俺は女の子に聞いた。

「俺に何か用か?」

「えと、お兄ちゃんが、この部屋に住んでるんですか?」

「そうだけど」

「私、今日101号室に越してきた、仁科見由です。お隣に挨拶に来ました」

 彼女は丁寧にお辞儀をした。

「ああ、そっか。俺は安保祐介。よろしくね」

 俺はその小さな隣人に挨拶をした。

「はい、よろしくお願いします。あと、これはほんの気持ちですけど」

 見由はそう言って、俺に包みを差し出す。

 それは百貨店などでよく見かける、カスタードをパイ生地で包んだ有名なお菓子だった。俺は丁重にその包みを受け取る。

「ありがとう。もしよかったら、あがってく? お茶でも出すけど」

「え、いいんですか?」

「もちろん。せっかくもらったんだし、みんなで食べたほうがおいしいだろ?」

「じゃ、お邪魔します」

 純粋な笑顔で微笑みながら、彼女は言った。

「それと、達也。おまえももしよかったら、あがってくか? お茶は出さないけど」

 さきほどと微妙に違う口上で、俺は言った。

「ああ、あがらせてもらうよ」

 と、達也は言った。奴も甘いものには目がないクチだ。

 というより、もらいものには目がないクチといったほうが正しいかもしれない。

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