さうす・りばてぃー
 同じ美術部員としては、手伝ってやりたい気持ちもあるのだが、今は目の前の遊びを優先させることにする。

 どうせ手伝おうとしても邪魔にされるだけだろうし。

 なにせ、美術で3以上をとったことのない俺である。

 もっとも、それには遅刻やら授業態度なども大いに加味されているようだが。

 そして、午後は大過なく過ぎていった。

 昼食をとり、ボール遊びやら湖畔で昼寝やらをして、一日が終わる。

 夜は、昨日とは違って、平和だった。

「やっほー、遊びに来たよーっ!」

 星空の元気な声が響く。

 痛めていた足も、一日休んだことでだいぶ良くなったようだ。

 その後ろには、穂波と見由。

 その手には、いろいろな飲み物が入った袋が提げられていた。

 その中の8割はアルコール。

 昨日見由が持っていた重い荷物の正体は、これだった。

「よし。じゃあ、さうす・りばてぃーのみんながこうして集まったことを祝し、これからもみんながこうして仲良くしていられることを祈って――――乾杯!」

「かんぱーい!」

 俺の乾杯の音頭に合わせて、みんなが声をあげる。

 そして、いつものように知と星空が酔っ払い、夜は更けていくのだった。

 俺たちは、時が経つのも忘れて、話を弾ませた。

 四時まで飲んでいて、翌朝起きたときには、もう帰る時間だった。
 
 俺たちのはじめての旅行は、こうして終わった。

 後になって、俺は思う。

 このときの旅行は本当に楽しい旅行で、何より思い出に残るものだったと。

 かけがえのない仲間たちと過ごした、かけがえのない時間。

 俺はそれを、いつまでも大切に胸の中にしまっていることだろう。

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