さうす・りばてぃー
 俺がドアを開けると、そこには星空が立っていた。

 いつものように、リボンで髪をまとめている。

「なんだ」

 無愛想に言う俺。絶対、ろくな用件じゃないに決まっている。

「入っていい?」

「用件を言え」

「宿題やった?」

 にこにこと笑いかけてくる星空。

「今からやるところ」

「一緒にやらない?」

 彼女の提案に、俺は頭の中で考えた。

 二人でやれば、半分のスピードで終わるのではないか。というか、写させてもらえるのではないか。

 そんなやましい考えを抱いた俺は、扉を開いていた。

「どうぞ」

「おじゃましまーす」

 星空はそう言って、中に入ってきた。

 いつものように、動きやすそうなシャツ一枚という格好である。

 こいつにおしゃれ着というものは存在しないのだろうか。

 それとも、単に俺がそういう対象としてみなされていないだけだろうか。

「いやー、祐介ならたぶんやってないと思ってたよ」

「相変わらず失礼なやつだ」

 アイスコーヒーを出してやりながら、文句を言う俺。

「私はね、英語と数学と物理は終わったから、あとは古典なんだけど。祐介は?」

「英語と数学と物理と古典だけだな」

「それって、全然やってないってこと?」

「そうとも言う」

 星空は目を丸くした。

 俺の豪胆ぶりに、肝を冷やしたに違いない。

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