さうす・りばてぃー
「ち、違った? じゃあ第一のほうとか」

 俺はあわてて言ったが、見由は完全に固まっている。

「ばかだな、祐介。中学校のほうだよ。な、見由ちゃん?」

 あ、しまった。

 確かに、中学生といわれれば、少し小さいが、おかしくはない。

 実際、小学校六年と中学一年など、ほとんど変わらない。

 だが、見由はそれにも反応しない。消え入りそうな声で、彼女は言った。

「一応、この4月から希望が丘学園の一年生なんですけど……」

 うつむきながら言う彼女の声を、俺の耳はかろうじて捉えていた。

 今度はこっちが硬直する番だった。希望が丘学園に附属はない。

 高校生? ランドセルを持っても似合いそうなこの子が?

 そんなことを思いながら彼女を見たが、やはり何度見直しても高校生には見えなかった。

 斜め向かいでは、達也が同じように凍っている。なんとかフォローしなければ、と思うが、うまい具合に言葉が出てこない。

「二人とも、ひどいですよー」

 見由は指と指をくっつけていじけている。

「い、いや、ごめん。てっきり小学生だと思ってた」

 俺はまったくフォローになってないフォローをした。

「そりゃ、確かに私は小さいですけど」

 と見由は言う。身長だけの問題ではないと思うのだが、それは言わないでおいた。

 顔にしても、服装にしても、どうひいき目に見ても大人っぽくは見えない。顔は童顔だし、服装は、白のパーカーにデニムのスカートである。

 もっとも、この容貌でシックな黒のドレスなど着られても困るので、これはこれでいいのだろう。

「でも、希望が丘高校の一年だったら、俺たちと同じだよね。よろしく」

 凍結から復活した達也が、ここで助け舟を出した。ナイスだ、達也。

「あ、お兄ちゃんたちも同じ高校ですか?」

「ああ。よろしく」
 俺は会釈を返す。

「よろしくお願いします。同じクラスになれるといいですね」

 ようやく機嫌を直した見由が、にこりと微笑んだ。
 それから俺たちは、15分ほど話し込んで、解散となった。
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