さうす・りばてぃー
 その後、星空と別れてから、穂波にそれとなく聞いてみる。

「星空はああ言ってたけど、本当にいつも通りでいいのかな?」

「いいと思うよ。あんまり私たちが意識しすぎると、かえって逆効果だと思うし。それに、いきなり告白されても、達也君もとまどうんじゃないかなあ。こういうことは少しずつ、だよ。ゆうくん」

 諭すように言われてしまった。

 へいへい、どうせ俺は女心に鈍感ですよ。


 そして、問題の日曜日になった。

 駅前で待ち合わせて、スタジアムに向かう四人。

 チケットを取ったのが一週間前だったので、さすがに最前列というわけにはいかなかったが、それでもわりと見やすい位置だった。

 それほど人気のないカードだったからだろう。

 一部の熱狂的ファンを除いては、みんな落ち着いて座っている。

 席についてから試合が始まるまで、穂波は俺から渡されたサッカー雑誌をじっと見ていた。

 彼女はサッカーに関してはほとんど無知なのだ。

 わかるのは、せいぜい日本代表クラスの選手だけだという。

 それも、せいぜい四年に一度のワールドカップで見るくらいのものだ。
 
 一方、達也と星空、それに俺の三人は、サッカーに関してはなかなか詳しい。

 一応、今日の試合に出ている選手くらいはみんな知っている。

 とはいえ、星空はサッカーよりも隣が気になるようだ。

 目立たぬ程度に、ちらちらと達也のほうを見ている。
 
 ちなみに席順は、一番通路側が俺で、その隣が穂波。

 次に星空がいて、最後に達也がいる。

 達也は俺と穂波のデートだと誤解してくれているようなので、その席順に持ち込むのはたやすかった。

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