さうす・りばてぃー
 負け惜しみはこれくらいにしておこう。

 とりあえず、今日は18日。

 俺は知に、参加するかどうかを聞いていた。

 俺たちがいるのは、美術部の部室である。

 クーラーのないこの部屋だったが、ストーブを申請したところ、学校側の備品である電気ストーブを譲ってもらえることになり、現在部室の真ん中で大活躍中である。

 許可が下りたのには、やはりこないだの銅賞が大きく響いているようだ。

「で、どうする? 知も来るか?」

 二人してストーブに当たりながら、俺は聞いた。

「悪い。その日は無理だ」

 知は迷うこともなく、率直に答えた。

「女か?」

「まあ、そうだな」

 特に驚きはない。

 この男の周りには常に女の影がある。

 どこの誰だなんていうことを、知自身はしゃべったりはしないが、噂というのは、どこからか聞こえてくるものだ。

「今度のは、先月のやつとは別人か?」

「ああ」

 知はあっさりという。

 この男は、俺が観察しているところ、だいたい二カ月おきくらいに女を変えている。

 女のほうから告白してきて、最終的には知がフるというパターンが多いようだ。

 別に俺も、それを責めたりはしない。

 もちろん、俺がそれをやるかといえば、やらない(×やろうと思ってもできない)が。

 人それぞれの愛し方があるだろう。

「わかった。じゃあ、また明日な」

 俺は荷物を片付け、知は中断していた絵の製作作業を再開した。


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