さうす・りばてぃー
「ありがと」

 穂波はまた笑顔に戻った。

 しかしその笑顔は、さきほどの本当に楽しそうな顔と違い、いくぶんか愛想の要素が入った笑いだった。

「たまたまうまくいったのよ」

 謙遜する穂波。驚いた、とは俺は言わないし、彼女も意外だとは言わない。

「俺も一回でいいからあれくらいの点数とってみたいよ」

「勉強は積み重ねだよ、ゆうくん」

 そう言って笑う穂波。

 確かに、彼女が言うと説得力がある。学校の外でも一日3時間くらいは普通に勉強してる女だからな、穂波ってのは。

「勉強したら?」

 穂波が言う。だが、俺にとって勉強ほど面倒なものはない。

「次の世代に期待しよう」

「それって、ゆうくんの子供に期待ってこと?」

「まあ、そうかな」

 あまり深い意味があってした発言ではないのだが、とりあえずそう答えてみる。

「誰との子供?」

 穂波はからかうように俺に言ってくる。

 奴の意図は読めている。

 ここで赤くなったりしたら俺の負けだ。

「頭のいい人」
 サラッと答えてやる。

「えっ……」

 穂波も特に赤くなったりはしなかったが、会話はそこで途切れた。

 今回は引き分けといえよう。

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